【〇〇のすすめ】003_バーチャル定年生活のすすめ

目次

「バーチャル定年生活」をおすすめする理由

【コラム】デパートの渡り廊下で見えた、ぼんやりとした未来 
 私が先日見かけたバーチャル定年生活をやってみようと思った光景をコラムにしてみました。

 人口40万人の地方都市にあるデパートに立ち寄ったある日のお昼時の出来事。
その本館と新館をつなぐ、やや年季の入った渡り廊下に、数脚の椅子が置かれている。
人通りは決して多くない。買い物を終えた人が一息ついたり、誰かとの待ち合わせに使ったり。その日、私もふと足を止めて、そのうちのひとつに腰を落とした。
 ふと正面に座っている初老の男性の存在に気がついた。彼は、自宅から持ってきたであろう新聞に黙々と目を通していた。ページをめくる手は慣れたものだった。
一面からテレビ欄まで、順番が決まっているかのように視線が流れていく。
そして読み終えると、今度は鞄から広告紙に包まれたおにぎりを取り出し、静かに食べはじめた。まるで“いつもの昼食”というように、淡々と。なんてことのない日常のひとコマだ。
でも、その光景を目にして、私は不意に胸の奥がざわつくのを感じた。この人は、きっとこの椅子に、何度も座ってきたんだろう。
新聞を読み、おにぎりを食べ、またゆっくり立ち上がる。
そんな時間を、繰り返している。それが日課なのか、日々の“居場所”なのか。
もしかすると、どこかで「今日も、これで終わりだな」と思っているのかもしれない。
 この男性の”過ごし方”を決して否定している訳ではないものの、急に、遠くない未来にいる“自分の姿”が重なった。
 会社を離れ、誰からも呼ばれることがなくなったとき、私はどこで時間を潰し、誰の記憶にも残らない日々をどうやって過ごすのだろう。何の予定もなく、誰にも頼られず、ただ時間が過ぎていく毎日。
その空白を、私は耐えられるだろうか。あの男性が見せたのは、穏やかで静かな時間だった。
だけど私には、どこか切なく、寂しく映った。「自分は、これから何を大事にして生きていくんだろう」
そんな問いが、頭から離れなくなった。ほんの数分の休憩だったはずが、思いがけず、自分の未来を直視してしまった瞬間だった。

「バーチャル定年生活」のはじめかた

【ステップ1】定年後の1日を想像してみる

 バーチャル定年生活を始めるにあたり、まずは定年後の1日を想像してまとめてみましょう。数年後に確実に終わりをみせる「現在の仕事を中心とした充実した毎日以降の世界」を先取りしてイメージするには定年後の1日を想像し、シナリオ化することが重要と考えます。シナリオ化するためのポイントを示します。
「現在の1日」を簡単に(箇条書き程度)まとめる
 平日と休日のある1日を時間と共に箇条書き
②「現在の1日」を元に定年後になくなるものを抜いていく
 例:出勤のためにアラームを忘れずにセットする
   会社での上司、同僚、部下との会話/期限までに求められている水準のタスクを仕上げる
③②を抜いた時の感情を整理し、メモに書き留める
 ここが一番重要です 
④①~③を元に定年後の1日をまとめる
 
   
【定年後のある日】
🕗 8:15 起床(アラームなしで自然に目が覚める)
 会議で自分が積極的に意見やアドバイスを行い、部下たちが頷いている光景があらわれる。
充実した感覚の中でふと目が覚める。起きた瞬間、「なんだ夢か・・・あ、もう仕事してないんだっけ」と現実の世界に呼び戻される。
隣で妻はすでに起きていて、朝の支度をしている音が聞こえる。
特に呼ばれもせず、自分もぼんやりと顔を洗う。

9:00 朝食(ひとりでパンとコーヒー)
 テレビをつけてワイドショーを流し見。
スマホでニュースアプリを開くも、どれも自分には関係のない話に感じる。
新聞も日経新聞を引き続き購読しているものの、会社員時代のような発見はない。惰性で読んでいる感じ。
仕事をしていた頃は、職場近くのコーヒーショップで日経新聞から世の中の動きを感じつつ食べていたことを少しだけ懐かしく思う。

🛋️ 10:00〜12:00 リビングでソファに横になりながらスマホや動画をだらだら
 気がつくと、1時間以上同じような動画を見つづけている。
何も考えずに過ごせるけど、見終わっても「時間が流れただけ」という感じ。
「今日も誰からも連絡が来ないな…」と気づき、少しだけ胸の奥がざらつく。

🍱 12:30 昼食(コンビニで買った弁当を自宅で食べる)
 妻は朝から近所のスーパーのパートに出かけている。私は近くのコンビニに昼ご飯を買いに行く。
定年後の数少ないルーテイン作業。現役時代には全く意識もしなかったコンビニの支払額を気にしつつ帰宅。
自宅で昼ご飯を一人で食べながら、「定年後って、こんな感じなんだろうな」と思う。
“何もしなくていい”という自由が、なぜか少しだけ罪悪感を伴う。

🚶‍♂️ 14:00〜15:00 散歩(目的もなく近所を歩く)
 歩いている間、会社員らしき人たちと何度かすれ違う。
自分が現役だった頃、平日の昼間に散歩している人を見て、「この人たちは1日をどう過ごしているのだろう」と思っていたのを思い出す。

今、その当時どう過ごしているのだろうと思った相手が今の自分であり何とも言えない複雑な気持ちとなる。

📕 16:00〜17:00 家で本を読むつもりが、集中できずウトウト
 現役時代に買っていたビジネス書を開いてみたが、なぜか全く頭に入ってこない。
「こんな本を今読んでも自分には役に立つことはないなぁ」と思いつつ、気づくとそのままうたた寝してしまう。

🍛 18:30 夕食(妻と簡単な会話)
妻は元気そうに「パート先で今日こんなことがあった」と話すが、なぜか話が入ってこない。
自分は今日何をしたんだろう、と振り返っても、思い出せる“出来事”がほとんどない。

💤 20:00〜22:00 テレビ → 風呂 → なんとなく寝る
一日を振り返ると、「何もなかった」というのが正直な感想。
現役時代の「今日も忙しい1日だった。明日もやることが満載だな。」「金曜日には今週も仕事がだいぶ進んだな。明日の土曜日は、愛娘(愛犬)のトリミングだ。」といったベットの上での充実した1日が終わる感覚は全くない。「明日もこの感じか」と思うと、ほんの少しだけ不安になる。
眠りに入る前にスマホの歩数計を確認すると本日の歩数は3,500歩。定年後はだいたい3,000歩台。現役時代は会社への通勤で毎日10,000歩以上歩いていた。現役時代は無意識の10,000歩だったが、今は3,000歩。この無意識のギャップにもすこし気持ちがへこむ。

「俺って…何なんだろうな」と、天井を見ながらぼんやり考える。

例えば、上記の感じです。必ず紙にイメージしたことを書き出してみましょう。
最初は、キーワード(出来事や感情)を書き出し、そこにさらにキーワードを追加してみましょう。

【ステップ2】バーチャル定年生活(フィールドワーク編)の実践

 ステップ1で定年の1日を言語化しました。次は、実践に移っていきます。
「実践編(その1)」は、フィールドワークを行います。できれば、仕事に支障のないタイミングで平日に有給休暇を取得してください。(もちろん無理のない範囲で)朝普通に起きて外出の準備をしましょう。
持ち物は、
 ・「財布」:定年後に使えるお金を想定して、1,000円~2,000円程度を入れておく。
   クレジットカードは置いておく。
 ・「ノート・手帳、筆記用具」
 ※できれば、自宅にスマホは置いて行ってください。

 外出の準備ができたら、最初にチェーンのコーヒーショップ(ド〇ールコーヒーショップとか)に朝食を食べに行きましょう。場所にもよりますが、リタイヤされている方を見かけると思います。1人で過ごされている方、集合時間を合わせて数人で会話をしながら過ごされている方。同じ空間に居ることでリタイアされている方々から醸し出される雰囲気を感じ取り、気づいたこと感じたことをメモしてください。
 コーヒーショップを出た後は、街中をぶらぶら歩きつつ、図書館に行ってみましょう。コーヒーショップと同じような気づきを随時メモしてください。
 2023年の統計では、日本人の約3割が65歳以上とのこと。つまりは、3人に1人が65歳以上です。更にここから何かしらのお仕事をしている方(就業している方)と要支援・要介護(自立的な活動が難しい方)を除外するとざっと6人に1人となります。この方々皆さんが全員外出されている訳ではありませんが、一方で平日の朝~昼間には私と同じく現役会社員は仕事をしておりますので、相対的にこの方々を目にする機会は多いと思います。
 念のためお伝えしておきます。リタイアされている人生の先輩方がどのように1日を過ごされているのかを参考とさせていただき、自分なりの(将来の)1日をバーチャルで実践するというものです。この方々を反面教師としてと言っている訳では決してありませんのでその点ご承知の程お願いいたします。

【ステップ3】バーチャル定年生活(机上編)の実践

 「実践編(その2)」に移ります。ステップ1とステップ2の内容を元に机上での実践をしていきましょう。
ステップ1で書き出した定年後のある日のノートの余白にステップ2で人生の諸先輩の過ごし方から得た感想、感情、気づきをメモしてください。感想や気づきは、自身が想像する(現在と比較した)マイナス面の感想・感情や定年退職後のヒントとなるプラス面の気づきもあると思います。誰に見せるものでもありませんので、思ったことを素直に整理してみてください。
 次に今まで整理した内容より、自分なりの(改善後の)【定年後のある日】をまとめていきましょう。
つまりは、定年後の理想の1日を整理するという意味です。

【定年後のある日】
🕗 7:00 起床
 静かに目覚める朝。 窓を開けると、すこしひんやりとした空気が部屋に入ってくる。 会社に行かない朝だけれど、「今日はあの活動があるな」と思うと、自然と体が動き出す。
 妻は、少し前に起きて朝食の準備をしている。
☕ 8:00 朝のルーティーン
 2人分のコーヒーをいれながら、昨日の活動メモを振り返る。 毎朝5分だけ書く「定年日記」には、自分が感じたこと、誰と話したか、小さな気づきを残している。
今日は地域のラジオ体操に参加する日。顔なじみの方と会えるのがちょっと楽しみだ。
🤝 9:00 ラジオ体操と井戸端会議
 近所の公園で10人ほどが集まり、ゆるく体を動かす。 そのあと、すこしだけ立ち話。 「○○さん、先週話してた畑の話、よかったね」なんて、ちょっとした会話がうれしい。
 妻は、自分の小遣い稼ぎのため、近所のスーパーにパートに出かけている。商品の陳列場所を覚えるのが毎日大変とこぼしているものの、やりがいを感じているようで充実した雰囲気。少子高齢化が進み、スーパーの同僚も年齢層がかなり高め。
📚 10:30 ボランティア活動(地域の図書館で読み聞かせ)
 週に一度、地域の図書館で絵本の読み聞かせをしている。 子どもたちの反応に笑ったり、驚いたり。「また来てね」の一言が、自分を必要としてくれているようで、じんわり快い。
🥗 12:00 昼食(仲間と軽くランチ)
 読み聞かせの後は、同じ活動仲間とカフェでランチ。 毎日の過ごし方、家族との関係、最近読んだ本の話など、話題は尽きない。
💼 13:00 ひとりビジネス(近所の小さな事務所で作業)
 自宅近くのレンタルスペースを週2で借り、小さなひとりビジネスを展開中。 オンラインでの相談サービスや発信などを通じて、無理なく“社会とのつながり”を保っている。 誰かの役に立つ感覚が、心地よい緊張感をくれる。
 現役時代から時間を見つけては情報収集、机上シミュレーション、コンテンツ作成を入念に行い作り上げた私のひとりビジネスは、仕事の場所に一切制約がない。そのため、近いうちに全国津々浦々のコワーキングスペースを巡りながらその土地に触れつつの”ノマド”生活を実践しようと考えている。現在、ノマド生活計画策定の段階だがこの計画を立てること自体定年後のモチベーションになっていると感じている。
🛎️ 16:30 散歩がてら、知り合いの八百屋へ
 夕食の食材を買いに近くの八百屋に。顔なじみの店主と、「この野菜どうやって食べるの?」なんて話す時間も楽しい。 近所のつながりが自然とできていることに、自分でも驚く
🍳 18:00 夕食(妻と料理を一緒に)
 今日は一緒に餅子を包んでみる。 現役時代は夕食は外で食べて帰る毎日で、その頃には考えられなかった時間の使い方。 ゆっくり食べて、ちょっと飲んで、今日の出来事を笑いながら話したり、高齢となったもののまだまだ元気な愛犬はなとの週末の過ごし方を話したり。
 現役時代から入念に準備したNISA投資からの配当、私のひとりビジネスの収入、そして公的年金を合わせると贅沢はできなものの好きな時に好きなものを食べていける余裕はある。この小さな余裕も定年後の心のゆとりにつながっていると実感している。
📓 21:00 今日の記録と“自分への声かけ”
 夜は、日記に1日の感想をメモする。 「誰かの役に立てたこと」や「話しかけてもらえたこと」など、小さな承認の記録。 「今日も、自分らしく過ごせた」と、そっと言葉を添えてから眠りにつく。

まとめ

 いかがでしょうか?
バーチャル定年生活という”ひとりワークショップ”を通じて、「定年後生活の目的や意味が曖昧なまま”もやもや感”一杯の【定年後のある日】」と「現役時代からしっかりと準備してきたことで”現役時代とは少し異なる形での充実感”一杯の【定年後のある日】」のシナリオを作成。その両シナリオを現役時代の今の段階でイメージすることで定年までに私たちは何を準備したら良いのか、準備すべきなのかをご理解いただけたと思います。
 定年後の”充実感”一杯の毎日は、今からの入念な準備にかかっているのです。

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